出版不況という嘘

 出版業界は、不況なのでしょうか?

不況とは何か

 「出版不況」という言葉があります。この言葉は、出版業界の現状を端的に現した言葉として、様々な場所で用いられています。このブログでも度々使ってきました。全く関係ありませんが、シュッパンフキョーは六神合体ゴッド取次ダンボーの宿敵です。
 私は、この「出版不況」という言葉に違和感を感じています。なぜなら、終わりの見えない不況は、不況ではないからです。
 不況とは、上下を繰り返す景気の波の一部分を表す言葉です。特に「上がって下がってまた上がる」の波の流れの中の「下がって」の部分になります。
 不況は波の一部分であるという事をを前提にすると、現状を不況と呼ぶには、

  • 以前より景気が悪い(上がって下がった)
  • 将来的に景気が良くなる可能性がある(下がってまた上がる)

という二つの条件を満たさなければなりません。

出版業界は不況ではない

 私の勝手な考えですが、出版業界の現状は、後者の条件を満たしていない。おそらく「下がってまた上がる」のプロセスを踏む事ができない。*1
 今後の出版業界は、市場が縮小し続け、市場規模にあったプレイヤーだけが生き残ることになるでしょう。業界の努力によって右肩下がりが下げ止まり、微増微減を繰り返すようになるかもしれないが、右肩あがりにはならない。今後景気が良くなる可能性が無い現状を、不況と呼ぶのは不適切でしょう。
 では、出版業界の現状を何と呼ぶのが適切なのでしょうか。それは「衰退」です。終わりが見えない不況は、不況ではなく「衰退」なのです。 
 というわけで、今日以降、当ブログは、出版不況ではなく「出版衰退」という言葉を使う事にします。

*1:上向く要因ありましたっけ?