同じ事を言い続けている業界は衰退する

当たり前の話

 非常に当たり前の話です。「駄目な事を改善できない業界に未来は無い」というだけの話です。以下猛烈な余談です。
 トーハンのポイント制の詳細を知りたいが為に、文化通信のデジタル版を2週間買いました。そこで気になったのが、新聞面で北海道の各社販売責任者の記事内の『公正販売の風は北海道から』という一文です。
 …一体いつになったら新聞業界は公正な新聞販売を行うのですか?日露戦争終結辺りからほとんど変わってないだろ…。

新聞販売公正化と乱売

 新聞販売が公正化されるというのは、おそらく値引きと景品を用いた乱売が終結する事を意味しています。乱売の具体例として、何ヶ月無料にするから取ってくれという無代紙による実質的な値引きや、契約を継続してもらうための値引き、ルールの上限を超えた高額景品を用いた勧誘などがあります。拡張団はまだあるんですかね?
 詳細は長くなるので省きますが、この乱売は日中日露戦争後から続く新聞業界の文化です*1日露戦争終結から約100年、新聞業界はほとんど変わっていません。

新聞業界と乱売

 新聞業界は、日中日露戦争によって増やした部数を維持する為に、壮絶な争いを繰り広げました。1ヶ月定価50銭のものでも場合によっては40銭や30銭、時には15銭といった乱売が行われました。さらに付録や景品なども用いられるなど、やれる事は全てやった乱売合戦となりました。
 あまりの乱売の酷さに耐えられず、度々販売業者による定価遵守の申し合わせがとり行われました。ですが、他店が歩調を合わせなかったり、仲間割れや裏切りを行ったりなどと、定価遵守は一度も成功することはありませんでした。
 現在は100年前と比べると状況が若干異なりますが、やっている事は今と大差ありません。新聞業界は、新聞を、内容ではなく他のサービスと抱き合わせて売り続けているのです。結局100年間「安くするから購読してよ」「これつけるから購読してよ」を繰り返しているのです。

乱売と新聞社の思惑

 このような醜い売り方は、各社が専売制を敷き、小さいエリアで限られた読者の奪い合いを続けている限り続きます。この乱売は、「部数を増やしたい」という新聞社の思惑が原因なので、新聞社の収入が減って思惑どころではなくなるまで続きます。
 今日、新聞社は広告収入がモリモリ減っています。新聞販売店も絶賛減少中です。そろそろ新聞社は思惑とか言っていられなくなるかもしれません。その時遂に、100年言い続けた念願の新聞販売公正化が、達成されるのです!但し「企業体力がなくなって、乱売ができなくなったから」という最低な理由で。散々同じ事を言っておきながら、結局自主的に乱売を止める事が出来ないなんて恥ずかしくないんですかね、大人として…

そして出版業界へ

 さて、新聞業界のように同じ事を言い続けている業界として、出版業界があります。『責任販売制』『出版物流効率化』『書店マージンの拡大』等々の事は、10数年前くらいから掲げられている主張ですが*2、未だ達成されていません。あ、物流は良くなってるかもしれない。王子・桶川的な意味で。
 同じ事を言い続けっぱなしじゃなくて、問題をどんどん解決していかないと、衰退していくだけですよ?

新聞社―破綻したビジネスモデル (新潮新書)

新聞社―破綻したビジネスモデル (新潮新書)

*1:正確には、太平洋戦争中の共販制によって乱売が一度落ち着いた期間がある

*2:ググって出てきた10数年前の文章に散見されたはず