やる夫で学ぶ書籍再販制度導入(やる夫づくし編)
導入
____ / \ / _ノ ヽ、_ \ / o゚((●)) ((●))゚o \ ほんとはまじめなエントリーでやりたいんだお… | (__人__) | \ ` ⌒´ / ____ / \ / _ノ ヽ、_ \ / o゚⌒ ⌒゚o \ でもまじめなエントリーは書くのがしんどいお… | (__人__) | まじめなエントリーを書く知識もないお… \ ` ⌒´ / ____ /⌒ ⌒\ /( ●) (●)\ /::::::⌒(__人__)⌒::::: \ だから「やる夫で学ぶ」でやるお! | |r┬-| | 面倒だから全員やる夫だお! \ `ー'´ /
図書館で借りた本に面白い記述があったので、自分用のメモも兼ねてエントリーにします。興味のある人は、下記の参考図書を読むといいと思います。
phase1:独占禁止法制定
1947年 独占禁止法制定
____ /_ノ ヽ、_\ o゚((●)) ((●))゚o /::::::⌒(__人__)⌒::::: \ | |r┬-| | (⌒) | 公 | | | 取 | ノ ~.レ-r┐、 | | | | | ノ__ | .| | | \ `ー'´ /〈 ̄ `-Lλ_レレ  ̄`ー‐---‐‐´ 「私的独占、不当な取引制限及び不公正な取引方法を禁止しするおwwww」 「大手涙目www」
1947年の独占禁止法制定より、再販売価格維持行為*1が規制の対象になりました。
ノ L____ ⌒ \ / \ / (○) (○)\ / (__人__) \ | |::::::| | \ l;;;;;;l /l!| ! / `ー' \ |i / 化粧品業界 ヽ !l ヽi ( 丶- 、 しE |そ ドンッ!! `ー、_ノ �堯�l、E ノ < レY^V^ヽl 「こちとら大正時代から再販売価格維持でやってきたんだお!」 「どーしてくれるんだお!!」
ここから化粧品業界は、再販売価格維持行為を合法化しようと尽力することになります。
phase2:反逆の化粧品業界
1950年6月 資生堂2代目松本昇、参議院当選
,.へ ___ ム i 「 ヒ_i〉 ゝ 〈 ト ノ iニ(() i { ____ | ヽ i i /__, , ‐-\ i } | i /(●) ( ● )\ {、 λ ト−┤. / (__人__) \ ,ノ  ̄ ,! i ゝ、_ | 松 ´ ̄` 本 | ,. '´ハ ,! . ヽ、 `` 、,__\ /" \ ヽ/ \ノ ノ ハ ̄r/:::r―--―/::7 ノ / ヽ. ヽ::〈; . '::. :' |::/ / ,. " `ー 、 \ヽ::. ;:::|/ r'" / ̄二二二二二二二二二二二二二二二二ヽ | 答 | T S U B A K I │| \_二二二二二二二二二二二二二二二二ノ
1952年後半 独占禁止法改正検討開始
____ / 公 取 \ / ─ ─\ / (●) (●) \ | (__人__) | / ∩ノ ⊃ / ( \ / _ノ | | .\ “ /__| | \ /___ / 「そろそろ独占禁止法を改正するお」 「経済政策の為に、不況カルテルと合理化カルテルを、独占禁止法の適用除外ににしたいお」
化粧品業界動く
|┃ ガラッ. |┃ ↓化粧品業界 |┃ ノ// ./ ̄ ̄ ̄ \ |┃三 / \ / \ 改正の話しは聞かせてもらった |┃ / (●) (●) \ |┃ | (__人__) | |┃三 \ ` ⌒´ / |┃三 / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ \ ___ / \ / \ , , /\ >>公取 / (●) (●) \ | 化粧 (__人__) | \ ` ⌒ ´ ,/ . /⌒〜" ̄, ̄ ̄〆⌒,ニつ | ,___゙___、rヾイソ⊃ | `l ̄ . | | 「アメリカや先進諸国では、化粧品が独禁法の適用除外として認められているお!」 「日本でも化粧品を適応除外にするお!」
phase3:独禁法改正
1953年3月(第15回国会)委員会にて独禁法改正の審議開始。
↓中村高一議員 / ̄ ̄\ / 中 村 \ |:::::: | 適用除外はないだろ・・・ . |::::::::::: | 常識的に考えて・・・ |:::::::::::::: | ....,:::´, . . |:::::::::::::: } ....:::,, .. . ヽ:::::::::::::: } ,):::::::ノ . ヽ:::::::::: ノ (:::::ソ: . /:::::::::::: く ,ふ´.. -―――――|:::::::::::::::: \ -―,――ノ::ノ―― |:::::::::::::::|ヽ、二⌒)━~~ 「再販売価格維持行為を容認することは、消費者利益を害するだろ、常識的に考えて」 「ライオン歯磨きやなんとかポマードなんかを適用除外にする事は、有力メーカーの保護だろ」 ノ L____ ⌒ \ / \ / (○) (○)\ / (__人__) \ | |::::::| | \ l;;;;;;l /l!| ! / `ー' \ |i / ヽ !l ヽi ( 丶- 、 しE |そ ドンッ!! `ー、_ノ �堯�l、E ノ < レY^V^ヽl 生協連・主婦連他「適用除外??そんな馬鹿げた制度は考えられないお!!!値引きで安いのが一番だお!」
化粧品業界、焦る
↓化粧品業界 ______ /:∪::─ニjjニ─ヾ /:::li|.:( ○)三 (○)\ (:::||!.:∪::::: (__人__)):::: i| )::::::::::::: |r┬-| li::::/ /::::::::::::::: `ー ' ::::::ヽ 「お…思いのほか反対が多いお…。これじゃ化粧品の適用除外が通らないかもしれないお」 ,ィ __ ,. / |´ ̄`ヽー- 、 ト、 , -‐、/./.- 、 / | | 化粧 ヽ l l ( 火◇風 ノ /o ̄`ハ._.ゝ===┴=く.ノ- 、 ノ ◇ ◇ ( /o O / l´ ⌒ ⌒ lo ',ヽ ( 山◇ 林 } \___/. ト、( ●) (●) ハ ∧ `⌒/7へ‐´ / ,イ レ::::⌒(__人__)⌒l~T--‐彡 /./ / ̄ ̄l. 彡、 |r┬-| ノ'l l::::::::::彡ー7⌒つ、 彡:::::::::::l ト、__ `ー' /| l::::::::::::ミ {,_.イニノ 彡ソ/ノハ ト、 \ / ,イ 川ハ ヾー‐'^┴ 「業界の存続をかけた一戦だお!再販制度導入の為に積極的に運動をするお!!!」
反対が多く成立が危ぶまれると感じた化粧品業界は、積極的な運動を展開するようになります。
1953年6月 資生堂2代目松本昇、再販制度の導入を公取、通産省、衆参議員に陳情。
___ / \ / \ , , /\ >>偉い人達 / (●) (●) \ | 松 (__人__) 本 | \ ` ⌒ ´ ,/ . /⌒〜" ̄, ̄ ̄〆⌒,ニつ | ,___゙___、rヾイソ⊃ | `l ̄ . | | 「なにがなんでも、化粧品を適用除外にするお!!!!!!!!!わかってるかお!」
1953年7月(第16回国会) 公取委員長横田、答弁。
____ / 横 田 \ / ─ ─\ / (●) (●) \ | (__人__) | \ ` ⌒´ / ,,.....イ.ヽヽ、___ ーーノ゙-、. : | '; \_____ ノ.| ヽ i | \/゙(__)\,| i | > ヽ. ハ | || 「やかましくこの制度を希望しているのは、化粧品と医薬品の組合だお」
1953年9月 改正独禁法交付
,.へ ___ ム i 「 ヒ_i〉 ゝ 〈 ト ノ iニ(() i { ____ | ヽ i i /__, , ‐-\ i } | i /(●) ( ● )\ {、 λ ト−┤. / (__人__) \ ,ノ  ̄ ,! i ゝ、_ | 化 ´ ̄` 粧 | ,. '´ハ ,! . ヽ、 `` 、,__\ /" \ ヽ/ \ノ ノ ハ ̄r/:::r―--―/::7 ノ / ヽ. ヽ::〈; . '::. :' |::/ / ,. " `ー 、 \ヽ::. ;:::|/ r'" / ̄二二二二二二二二二二二二二二二二ヽ | 答 | 適 用 除 外 │| \_二二二二二二二二二二二二二二二二ノ 改正により、独占禁止法の適用除外が導入され、化粧品など一部の日用品の指定再販と、著作物の法定再販が認められた。
以上が独禁法の適用除外として再販制度が導入された経緯です。再販制度の導入は、公取ではなく化粧品業界がイニシアティブを取って行ったのです。出版業界はなーんにもしてきませんでした。
ではなぜ出版物が適用除外になったのでしょうか。それは公取が自身のメンツを守る為です。
なぜ書籍が適用除外になったのか
独禁法改正中にて
↓公取 ____ /ノ ヽ、_\ /( ○)}liil{(○)\ / (__人__) \ | ヽ |!!il|!|!l| / | \ |ェェェェ| / 「このまま再販制度が導入されると、公取が化粧品業界の圧力に屈したのが丸見えだお…」 「メンツ丸つぶれだお…」 ____ / \ ( ;;;;( / _ノ ヽ__\) ;;;;) / (─) (─ /;;/ | (__人__) l;;,´何か良い方法はないかお… / ∩ ノ)━・'/ ( \ / _ノ´.| | .\ " /__| | \ /___ ____ / \ / ─ ─\ / (●) (●) \ | (__人__) | / ∩ノ ⊃ / ( \ / _ノ | | .\ “ /__| | \ /___ / 「なになに…ヨーロッパ諸国は出版物の再販を容認しているのかお」 「西ドイツには出版物の適用除外があるのかお」 | \ __ / _ (m) _ |ミ| / `´ \ ____ /⌒ ⌒\ /( ●) (●)\ /::::::⌒(__人__)⌒::::: \ | |r┬-| | \ `ー'´ / 「そうだお!化粧品だけじゃなくて出版物もセットで適用除外にするお!」 「そうすれば、化粧品業界の圧力に屈したなんて思われないお!」
というわけで、出版物の再販制度は、公取のメンツを守る為に導入されたらしいです。化粧品だけだとメンツが丸つぶれなので、ついでに出版物も適用除外にしたとか。
出版再販の導入に、合理的な理由は存在しません。文化への配慮もありません。なにせ再販制導入の関係者達が、書籍再販導入の経緯をつまびら*2かでないと言っているのですから。
再販制導入に直接間著した公取委の当事者や独占禁止法の専門家達が、「といわれている」「つまびらかでない」「明らかではない」などと著作物再販制度導入の論理的必然性がないことを婉曲的かつ曖昧に述べているのはおかしい。「つまびらかでない」事情によって導入された事が明らかになってくる。
書籍再販と流通寡占P.48
導入に熱心であった化粧品の再販は、1997年4月に全廃されました。一方、なーんにもしてこなかった出版物の再販は今日まで維持され続けている。不思議なものです。
参考書籍
- 作者: 木下修
- 出版社/メーカー: アルメディア
- 発売日: 1997/10
- メディア: 単行本
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