出版RFIDにおける業界3者の利点

 「書店での万引き防止にぜひICタグ張り付けを」、大手書店など15社が表明 | 日経 xTECH(クロステック)の記事に違和感を覚えた。記事全体の構成のせいか、もしくは記事の最後の部分『「万引きが書店経営を大きく悪化させている。書店がつぶれれば出版社もつぶれる。コストはかかるがICタグをぜひ付けてほしい」と村越部会長は強調する。』のせいか。
 この記事だと万引きに苦しんでいる書店が出版社にわがままを言っているみたいじゃないですか。特に会長の発言は「書店は万引きで困ってる!RFIDやれば万引き減る!書店が減ったら、出版社は困るでしょー?だから出版社がコスト払って、RFIDつけてよ!」という印象を受けます。えー、私の読解力の問題でしょうか。

出版RFIDは皆が幸せになれる仕組み

 出版RFIDで利点があるのは書店だけではない。業界三者全てに利点があると推定されている。それぞれの利点は以下の通り。参考:http://www.jpo.or.jp/jpo/kanren/shiryo/ic/ic-tag-h18.pdf

出版社の利点
  1. 責任販売製導入による返品の減少と製本コストの削減
  2. POSレジよりも高度なデータを用いた定量的なマーケティング
  3. 検品・棚卸のコスト削減
取次の利点
  1. 責任販売による返品減少がもたらす物流コストの削減
  2. 検品・棚卸のコスト削減
書店の利点
  1. 万引き被害の減少
  2. POSレジよりも高度なデータを用いた定量的なマーケティング
  3. 客注品追跡と事故防止
  4. 業務効率化・物流コストの削減

 で、費用対効果を見ると、業界三者それぞれ2年から3年でRFID投資の効果が出るらしい。*1つまり、出版RFIDは誰かが損をするシステムではなく、皆が幸せになれる仕組みなのです。*2
 また、RFIDにかかるコストはRFIDでの利点で回収できるようですから、消費者に負担を求める必要はないでしょう。おそらく、http://blog.manga-yomouze.com/archives/64978386.htmlで危惧されている「本の価格があがる(=RFIDコストが消費者に降りかかる)可能性」はないでしょう。

業界三者全員にメリットがある事を強調しよう

 出版RFIDにおける書店の正しい主張は「出版社にはご迷惑をかけるが、業界3者全員に利点があるのだから、是非やって頂きたい」だろう。「苦しいから利益率を上げろゴラァ」と一方的に言い続けて何も変わらなかった過去に学ぼうよ。*3
 あくまでも今回の発言は業界外向けの会見の場だけのものであり、業界内には出版RFIDの利点が正確に伝わってる事を祈っています。
 また、JPOはもう少し分かりやすく消費者に情報公開しませんか?難しいpdfを読むのは疲れます。消費者に不安や誤解を与えるのは、出版業界にとってマイナスでしかありません。
 最後に。出版RFIDは利益率上げろ運動と比べると成功しそうなのですが、成功するのは中小の出版社、取次、書店が無くなった頃じゃないかなーと思う。なんとなく。

*1:利益増の辺りが、若干夢を見すぎな気もするが…

*2:あくまでも試算

*3:正確にはSCM銘柄の登場があるから、微妙に変わったのか